音楽のチョイス、バックストーリー、自然さの中にすごい演出−−「リンP」さん特集。


しばらくニコマス作品紹介から離れておりましたが、リハビリを兼ねて。
いつか取り上げさせていただきたいと思っていたPさんの1人、「リンP」さんを特集したいと思います。


リン さんの公開マイリスト
http://www.nicovideo.jp/mylist/4043794


ニコマス作品は、それを作る人が何を見せたいと思うか(または何を見たいと思うか)によって、素材となる音楽、映像ソース、エフェクトの傾向が出てくると思います。
好きなアイドルを、徹底的に映像に訴えて作品を作る方。
好きな音楽を、アイドルのダンスに乗せて聞いてほしい方。
好きなアイドルを見ていて思いついたストーリーを見てほしい方。


リンPさんの作品は、どこかこれらの流れそのものではなく、「アイドルマスター」というゲームと、その中に生きるアイドルを好きになっている自分に対して、もう一つ外の視点をお持ちなのではないかな…と感じる事が多くあります。
そして、アイドル好きの視点と、一つ外側の視点が相まって作り上げる作品群は、どれも何か心をくすぐってくる作品。
その仕上げ方が、また素晴らしい。

処女作〜2月まで

リンPさんは、処女作を含めて、「im@sclassic」タグの付く作品をいくつかUpされています。
すべての作品を見ると分かるのですが、classic、ゲームミュージックを含めて、Inst曲が多く存在します。

アイドルマスターモルダウ
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1697972


アイドルマスタークープランの墓」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1736440

見ていると、ダンスシンクロについても、「合わせる」ことに加えて、曲の持つ雰囲気の再現に気を配っているように見えますね。。

アイドルマスター 「プライスレス」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1810580

去年年末に発生した「箱○を買ってシリーズ」作品。
切り口のスマートさ、そして曲に合った「如何にも」な画面割と構成。今見ると、あのシリーズの中で正統派ながらも、センスが光りますね。
この辺から、リンPさんのオリジナリティが出来始めたような気がします。

アイドルマスター -ロード・トゥ・トップアイドル-
http://www.nicovideo.jp/watch/sm1822844

まさかの「グラディエーター」MADw
これは見た瞬間に笑いましたw この切り口はいいのかー?!みたいな^^;
この後に出てくるゲームネタの幅の広さを考えると、かなりのゲーム好きと見ましたが…


この辺までは、それでも「ちょっとセンスのある、シルクハットスキーなダンスシンクロメインのPさん」という感想でした。
しかし、その感想は、この後の作品群で思い切り良い方向に裏切られる事になります。


アイドルマスター 「SUPER GIRL」 完全版
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2022348

この作品の1つ前に発表されている、伊織メインの動画から、コミュシーンの取り入れなどを始められています。
そして、このボイス入りの曲に対して、ドラマ性を打ち出して来られました。
そのドラマは、セリフなど無しに、アイドルのキャラクター性を異様なまでに引き出しています。
セリフがあるわけでもなく、エフェクトがあるわけでもなく。使う素材と、組み合わせだけで、キャラクタの位置づけや性格をここまで引き出してくるのか…!と、思わされます。


アイドルマスター 「Darling」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2184243

如何にも、美希によく似合いそうな曲w
この作品では、曲の歌詞やリズムに合わせた画面構成のセンスに、息を飲むことになります。
素材となるダンスシーン/コミュシーンの組み合わせ、そしてカメラの切り替わりのタイミングを煮詰めると、エフェクトなしでここまで映像作品が完成するのか!という驚き。
残念ながら、静止画1枚では決して伝わらない、「動画としての完成度」が、この辺から急激に上昇しているのが、凄い…!

アイドルマスター 「思い出をありがとう」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2417779

まさかの全編ほぼコミュシーン。
例外的に長い作者コメントに、ちょっとした仕掛けもあるような。
リンPさんなりの、「思い出をありがとう」を作るとしたら、こうなるのでしょう。
ここまでの作品の作り方を見ていると、やはり演劇などに造詣が深い方なのかな…と思います。
ラストは必見ですよ!


アイドルマスターSpace Cowboy
http://www.nicovideo.jp/watch/sm2638698

こちらはガラッと変わって、洋楽コラボPV。
曲のイメージを生かして、ちょっと不思議な世界を作り上げてます。
歌詞の出し方、そしてカメラの切り替えや色の使い方。アイドルオールスターをペアで使って、じっくり繰り返しの鑑賞に堪える名作です。



雪歩「私は   」シリーズ

リンPさんの持つ、「センス」。
これを、創作ストーリー+αの形でシリーズ化されているのが、このシリーズ。



アイドルマスター 「私は   」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3083688
アイドルマスター 「Believe」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3554128
アイドルマスター 「first stage」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4165844
アイドルマスター 「私のうた」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm4542839

真に憧れて、アイドルの道を踏み出す雪歩。ストーリーだけを言えば、たったこれだけ。
しかし、思わず画面の中の雪歩を声を出して応援したくなるこの作りは、「創作作品に感情移入してしまう」経験を、こんな擦れたおっさんにまで思い起こさせる出来。
導入で雪歩を応援したくなり、最初のつまづきにちょっと悲しくなり、最初のステージの開始に息を呑み、繰り返される失敗に涙する。
使われている曲、そして色、雪歩のコミュシーンの組み合わせ、表情。どれもが、画面の中のアイドルに惹きこまれてしまう。
この切ないストーリーが、どのようなEDを迎えることになったとしても。このストーリーは傑作になる…と思います。*1


アイドルマスター 「GAME」
http://www.nicovideo.jp/watch/sm3852449

そして、ある意味上のシリーズ作品と対を成すのが、この作品。見た方も多いことでしょう。
「仮想世界」と「現実」の高い壁、そしてそれを突破したりしなかったり。ゲームが好きな人なら、嫌でも意識させる視点を、ほぼ完璧に作品として仕上げてきたこの内容には、参ったとしか言いようがありません。
他の作品に見られる、エフェクト/視覚効果を極力排し、歌詞に合わせたバックストーリー、タイミング、カメラ視点の切り替え、色調の変化で練り上げられた内容。
HMDを付けたアイドルと、通常時のアイドルとの切り替わりの自然さなど、技術的にも凄い実力を持っているのに、それよりも展開、構図、色といった部分に注力して、作品としての自然さを大事にして傑作を作り上げられたという事。
…なんて、そんな事を考える前に、まず感動させられましたっけ。
訴えている内容、そして繰り広げられているテーマ。実は割と分かりやすくなっています。しかし、そこから何かを引き出すには、どれだけ考えても足りない。


丁寧にコンテを切られたであろう、タイミングと構図だけで楽しくなってくる。
創作に感情移入してしまうストーリー。
そしてそんな自分を思い起こさせて、アイマスを再考させてしまう。


作品が訴えるテーマを明瞭にしつつ、楽しませて、さらにその中でじっくり考えさせられる。
そんな、リンPさんの作品を、これからも楽しみにお待ちしたいと思います。

そして、もう1つの楽しみ方。

リンPさんの作品についている、作者コメント。
短い文章ながら、ちょっとヒネリの効いたコメントが、とてもセンスがある文章で、毎回楽しみにしています。^-^
マイリストにもコメントがあるので、これと合わせて、リンPさんの世界を堪能するのも、おススメです。

*1:個人的には、BADENDもあるのかも知れない…なんて思っています。