第0章 エピローグA − 2005年夏 −


「はい社長、こちらが本日分の社長宛の郵便ですよ」
ドアが開けられ、山のような郵便を抱えた小鳥が、部屋に入ってきた。
「おいおい、今日から新事務所で、久し振りに個室の社長室なんだ、ノック位してくれたまえ小鳥君」
「何言ってるんですか社長、765プロにはそんな習慣似合いませんよ」
「ははは、いやまぁ、言ってみただけなんだが」
高木は苦笑いを浮かべつつ、郵便の山を整理し始める。


「それにしても、こんな大きな事務所に、アイドル達専用のトレーニング施設、レクリエーション施設、スタジオまで作っちゃって。ホントに大丈夫なんですか?」
「まぁ、算段はあるし、以前のように見栄えばかりに金をかけるよりは、ずっとましだろう」
「それはそうですけれども。でも、TOPアイドルの春香ちゃんは、今日ラストライブですよ?」
「まぁ、ラストライブといっても、引退が決定しているわけでは無いからね」
高木は郵便物から、分厚い封筒と、普通の封筒を選び出して、中身を確認し始める。


「引退は決まってないって言いますけど、春香ちゃん、昨日まで全く元気なかったですし。。」
小鳥の心配そうな顔を見て、高木は言う。
「あの時のような事は無いと思いたい。天海君はきっと歌を選ぶと、私は考えているんだが」
「そう…ですか」


「そうだ。天海君は、歌を選ぶ。」
普通の封筒を開けて読む高木から、自信に満ちた言葉が返ってきた事に、驚く小鳥。


「社長がそこまで言うのには、何か理由がありそうですね?」
「うん。1つは私の経験、そしてもう1つが、今届いたこれだ。」
「それはどなたからの…?」


「音無君は見かけたことがあるはずだ。元プロデューサーからの、どっきり○秘レポートだよ。」
「社長、その言い方、古いし胡散臭いですよ、もう。。」
「ははは、まぁカンベンしてくれたまえ。あ、それと、こっちの封筒は、君にだ。」


小鳥との会話が続く中、高木は思う。
(なぁ天海、高槻。俺は、アイドルの幸せを作る事が、少しは出来るようになっただろうか?)